【夢の行く道】 「……え、えーっと……この、状況は………?」 龍麻の戸惑うような声が部屋に響いた。 ───この状況。 龍麻が一人暮しをしているマンションの部屋で。 ───俺が、こいつを床に組み敷いているという状態だ。 「…あのなぁ、マジで分かんねェのかよ?」 龍麻らしいっちゃー龍麻らしいが、この体勢でオトコとオンナがやる事なんて一つしかないだろ? 俺は説明の代わりにトレーナーから覗くこいつの首筋に唇を落とした。 「ひゃあッ!?」 小さく悲鳴が上がる。そしてようやく理解したのか、龍麻の顔がこれ以上ないってくらい真っ赤になった。 「ままままま待って京一ッ!」 「待てねェ。」 逃れようとする手首を押さえ、更に唇を白い肌に這わせる。龍麻はそれだけでびくんと身体を震わせた。 「や、やめ…ッ」 『男』としての声とは少し違う声に、背中がぞくぞくする。
「…止めろって言ってるだろッ!!」 バキィッ!! 最後の力を振り絞ったみたいな龍星脚が炸裂し、俺は壁際まで吹っ飛ばされてしまった。 油断していたとはいえ流石は龍麻、伊達に俺の相棒じゃねェ…。 「ってェ……」 のろのろと起き上がりながら、腹をさする。…大事なトコを蹴られなかったのはせめてもの情けって奴かもしれない。 それでもこうまでハッキリと拒絶されて、俺は少なからずショックを受けた。 先日やっとの思いで好きだと伝える事が出来て。こいつも、俺を好きだと言ってくれて。 だけど俺の言う『好き』とこいつの言う『好き』は違うのかと思うと、堪らない気持ちになる。 「わりィ…」 それしか言葉が出ない。気まずいまま恐る恐る龍麻の方を見ると、龍麻は顔を赤くしたまま目に涙を浮かべていた。 トレーナーの裾をぎゅっと握る手は微かに震えている。 「…京一は、女なら誰でもいいんだ…」 「ちょっと待て、何でそうなるんだよ!?」 その台詞は聞き捨てならねェ。俺が今までどんな気持ちでお前の相棒やってたと思ってんだ。 「だって!!す、好きって言って…こんなにすぐ、そんなコトするなんて信じられない!!この無節操下半身男ッ!!もしかしていつもテキトーに女の子引っ掛けてこんな事してたんじゃないのか!?」 「馬鹿野郎ッ!!言っただろ、俺はずっと…ずっと前からお前に惚れてたんだぜ!?」 「それが信じられないって言ってるんだッ!京一にはバレてたけど、俺はずっと『男』をやってたんだよ!?今だって全然女の子らしくないし、む、胸だってナイし…。あッ、まさかやっぱり『リョウトウツカイ』って奴なのか!?」 「アホか───────ッ!!んなワケねェだろッ!!!」 やっぱりって何だよ、やっぱりってオイ!! そういや初めて龍麻を護るって言った時もホモじゃないかって疑われたんだっけ。 男女の云々に関しては滅茶苦茶ウブなくせに、何でそんな半端な知識だけはあるんだこいつは。 がっくりと肩を落とし、しみじみとこいつの天然にもほどがあると思ってしまった。
ふいに聞こえた消え入りそうな声に我に返ると、視線を床に落とした龍麻が目に入った。 トレーナーにジーパンという色気があるとは言い難い格好だがその表情はやけに艶っぽくて、今更ながらどきりとする。 「…京一と居ると、安心する。だけど…最近、不安になって仕方ないんだ。京一の事を好きなんだって気付いてから、どんどん俺が俺でなくなっていくんだ。これ以上ススんじゃったら…きっと俺はただの相棒でいられなくなってしまう。お前と離れられなくなってしまう。お前を独占したくなる…」 「ひーちゃん…」 自分の腕を抱えるようにして俯く龍麻の頬に、涙が一筋流れた。 「…俺の中に龍脈の《力》がある限り、俺は《人》ではないんだ。いつまた暴走するか分からない。その時、側に居る人が…助かる保証は何処にもないんだ。そんなの俺には耐えられない。だからお願い…」 最後まで言わせる事は出来なかった。気が付けば俺は思いっきり龍麻を抱き締めていた。 「ちょ、京一ッ…だから言ってるだろ!?」 顔を赤くしてばたばたと暴れるこいつを無視し、更に強く抱き締める。 「俺は、お前を愛している。」 「……………!!」 「だからお前に、俺の全てをやる。やったモンはもう、お前のモンだ。煮ようが焼こうがお前の好きにしていいんだ。誰にも文句を言う資格はねェ。」 俺の言いたい事が分かったのだろう、腕の中で龍麻が息を呑む気配がした。
相棒だ、好きだと言っておいて、こいつの抱えたものに今まで気付かなかった自分が許せなった。 龍麻はまさに、自分の身体を張ってこの東京を救ったのだ。仲間の誰にも気付かれないように。自分だけが苦しめばいいと。 だけど今、本気で思う。 こいつの為になら俺の命なんか惜しくない。こいつと一緒に居られるなら、どんな事になってもいい。 一緒に、こいつの宿星と闘って行きたい。 …そんな事を面と向かって言ったら、ふざけるなッて怒鳴られるのは分かっている。 こいつは自分よりも他人が傷付くのを何よりも恐れる奴だから。 それでも、心の中で誓わずにはいられなかった。
「…京一なんか煮ても焼いてもマズイに決まってる。」 「ヒドイわ、こんな若くてぴちぴちしたオトコを捕まえてッ!」 「……お前、ほんっとーに馬鹿だろ。」 「今頃分かったのか?」 ついに噴き出した龍麻の瞼にキスを落とす。涙を舐めとると、そのまま形のいい唇に俺のそれを重ねた。
「だから大丈夫だって、俺が付いてる!!絶対、満足させっから!!」 「そ、そーゆー問題じゃない───ッ!!結局お前にはソレしかないのか、このエロ猿ッ!!」 そして新宿の空に久々の黄龍が昇った。 ちゃっかりベランダを開けてから放つ辺り、やっぱりこいつには敵わねェ…。
もうすぐ俺達は中国に渡る。これからもずっと一緒なんだから。 一緒に。 ゆっくりと歩いて行こう…な? 俺はずっとお前のモンなんだから、さ。
京一「結局お預け食らったワケだけどよ、なんかほんとにイキナリだよなぁこの展開…。 ちょっと前までの俺の紳士的苦悩が嘘みたいだぜ…(しみじみ)」 龍麻「な、な、な、何がどーなって何時の間にこーゆー関係になったんだよ俺達!? こ、告白どころか俺なんかろくに自分の気持ちにも気付いてなかったのにッ!」 京一「何でも、暑さにやられて急に俺とひーちゃんの18禁話が書きたくなったらしいぜ。 で、ちょいと後日談っつーかパラレルワールドのつもりで書き始めたんだとさ。 一本で読めるように殆ど前作とはリンクしてないしな。 …結局あのバカ実力がなくて(怒)、ギャグで終わらせやがったけどよ。」 龍麻「(ほッ…た、助かった…)け、けどコレほんとに【陽】でいいのか? もともと【陰】に投稿するつもりだったんだろ?(真っ赤)」 京一「…据え膳のコレを18禁と言うのは誰が許してもこの俺が認めねェ。(←何様だ) 今時これくらいジャ○プでも、りぼ○でもやってるしな。 18禁ってのはもっと、あんなコトやこんなコトをッ!!(力説) だからひーちゃん、バカ作者の代わりにこれから二人で───」 龍麻「いでよ黄龍!!俺の願いを叶えてくれ!!(恥ずかしさの余り混乱)」 京一「ぐはぁッ!!…ひ、ひーちゃん、それって…ドラゴン○ールの神○…?(がく)」 そんな二人に近寄る影。 作者「ふ…だから私を怒らすなと言ってるだろう京一…龍麻は所詮私の言いなりだ。 だけどもし!!もしこれから時間と実力と真神庵が許せば!!(涙) この話のラストを変えて(おい)【陰】に持って行くコトも考えてます。 心の広い18歳以上の方、もし見かけたら(何時の話だ)そちらも読んで下さると嬉しいです。」 龍麻「う、嘘──────ッ!?(半泣き)」 目指せ【陽】の限界って事で。←待て!! |