【Xmas love】





「うわぁ…、キレイ……」

 小蒔が嬉しそうな声を出す。

「まさか、ホワイト・クリスマスとはね…どうりで冷えると思ったぜ。」

 俺も小蒔と同じように上空を見上げながら感嘆めいた声を出してしまった。

この東京に雪が振る事自体、珍しい。

巨大なクリスマスツリーの光を受けて舞い降りるそれは、なにか幻想的な雰囲気さえある。

そのまま俺達は暫く無言で雪を眺めていた。

 ふと、子供の頃師匠と山に篭った時の事が思い出される。あの時も雪が降っていた。

八剣に負けて、自分を見失った時にも思い出した。そのおかげで、今、俺はここに居る…。

「なァ、小蒔。いつか…俺の昔話を聞いちゃくれねェか?俺がまだ──どうしようもねェ、ガキだった頃の話をよ……。お前になら、笑って話せると思う………」

 何の脈略もなく言った俺の言葉に、小蒔は少し驚いたようだった。

黙って俺を見つめてくる。

そして──ふわっと微笑んだ。なんだか泣きそうな、笑顔。

………こいつ、こんなに可愛かったけ?

雪のせいだろうか。柄にもなく、一瞬見惚れてしまった。

「うん……待ってる。ボク…本当に京一の隣に居て、いいよね………?」

「ったりめーだ………」

堪らず俺は小蒔を抱き寄せた。すんなり俺の腕の中に収まる。

「へへ…京一、あったかいや。」

「……とーぜんだろ。」

「京一の背中は、ボクがちゃんと護るから、ずっと側に居て…いいよね……?」

「……ああ……」






 俺のズボンのポケットにはついさっき小蒔がくれた黄色い薔薇が差してある。

花言葉は『愛の告白』というらしい。

二度目の、告白。

今更、という気もしないでもないが、やっぱり嬉しい事には変わりない。




「小蒔……」

「…………………あッ!!もうこんな時間だッ!!」

「へ?」

「家で家族がクリスマスパーティー、してるんだ。京一もおいでよッ!」

「………………」






 口調からいって、どうやら他意は全くないようだ。

小蒔は本気で家族揃っての団欒に俺を招待している。 

……こいつにはコイビト同士にありがちの、『二人っきりの、ろまんちっくなクリスマス・イヴ』という発想はないらしい。

そりゃまぁいくらクリスマスだろーと、こいつの性格からいって、いきなりお泊り…なんて事はないとは思ってたけど。

こうも明るく無邪気にさらっと流されると健康な男子高校生としては悲しいものがある。

 そもそも、お互い気持ちを確かめた後も、今までが今までだったからどうしても照れが入って一線を超えられなかった。

何とか勢いでキスまではしたものの、学校では相変わらず漫才もどきをやらかしている。

立て続けに事件が起きて、それどころじゃなかったというのもある。

 クリスマスという口実があればもしかしたら……、と密かに考えていた俺の淡い期待は脆くも崩れ去った。

くそッ、ひーちゃんは今頃うまくやってるんだろーなぁ……。






「京一?」

「……何でもねェ、それじゃ行くかッ」

「うんッ!!へへッ、昨日から料理の下拵え、してたんだ。弟達すっごく楽しみにしてたんだから。あ、でも、お父さん達もいるからお酒は禁止だよ?」

「うッ…」

「なーんてね、今日は大目に見てくれるから安心しなよ。ほら、早く帰らないと料理もなくなっちゃう!!」

「お、おい、引っ張んなって!!」






 小蒔が俺の手を引いて駆け出す。

……ま、いいか。焦る事はない。焦って嫌われたくはない。 

俺は、本当にこいつが大切だから。

正直、こんな気持ちは初めてかもしれない。

だけど。

手を引いたまま先を行く小蒔の前に一瞬で周り込む。






「………馬鹿ッ、こんな人が沢山いるとこでッ!!」

「予約。」

「はぁ!?」






 今度は俺がまだ顔を赤くしている小蒔の手を引いて歩き出す。

触れるだけのキスは、こいつが俺だけのものだという予約。

俺はこいつだけのものという証明。

全てが終わったら、いつかきっと───な。






        【いつの間にやら恒例座談会】

京一「…………………(密かに木刀を握る)」

龍麻「あれ、珍しく静かだな、京一。いいかげん諦めたか。」

小蒔「……ま、京一が作者に言いたい事は大体分かるけど……(溜息)。

   何でひーちゃんがここに居るの?」

龍麻「気付いた人も多いだろうけど、前半のあれ、本来は俺に向けられるヤツだから。

   ったく、いくら使いたい台詞だからって、あれは邪道だよなー。

   ある意味、折角読んでくれた読者に喧嘩売ってるとしか思えないぞ。」

小蒔「そういえば、ひーちゃんも同じ所でデートしてたんだっけ。

   よく遭わなかったよねー。ね、相手は誰!?葵じゃないの!?」

龍麻「秘密。っていうか、俺も知らない…(汗)」

京一「そんなこたぁ、どーでもいいッ!!作者の馬鹿やろ─────ッ!!

   いつになったら俺はこっから先に進めるんだ──────ッ!?」

小蒔「(赤面)ほんっとにしつこいなッ!!京一のアタマにはそれしかないのッ!?

   大体、今までの話の設定上、12月の時点で何かあるワケないだろッ!!」

京一「小蒔……お前、そんなに俺が嫌か……?」

小蒔「う……も、もちろん京一は好きだけど……ッ」

龍麻「さり気に俺を無視してるなこいつら…仕方ない、京一にいい情報を教えてやるよ。」

京一「いい情報!?」

小蒔「ま、まさか……」

龍麻「そう、とうとう作者も、【陰】で書く覚悟を決めたらしい。」

小蒔「─────ッッ!!(思いっきり赤面)」

京一「うぉぉぉ──────ッ!!どれだけ焦らされたかッ!!作者、偉いッ!!」

龍麻「ついさっき馬鹿呼ばわりしたの忘れてるな、お前…。但し、『いつ書くか』は未定。

   ネタのストックは全く無いし、もっと京一を苛めたいとか言ってたしな。

   来週かもしれないし、半年後かもしれない。延ばし過ぎて途中で打ち切るかもな。

   わはは、もうしばらく苦しめよ、青少年ッ♪」

京一「………………(脱力)」

小蒔「……ひーちゃん……さっき無視したの、怒ってるんだね………」





改めて。ごめんなさい〜〜〜!!(土下座)
ええ、冒頭の台詞を入れたくてメモを片手に剣風帖のクリスマスデート、
京一バージョンと小蒔バージョンをプレイし直しました。
無理やり両方詰め込んでます。邪道です。
でも、大切な人に言う言葉って相手が誰でもそう変わらないんじゃないかと…(びくびく)。