──ゴッ!!
至近距離で飛ばされたスパナが、重い音を響かせて床に落ちる。
「…おま…、いいかげんそれ止めろって…」
「あ、あんたねぇ!! モノには言い方ってのがあるでしょーが!!」
痛みに耐えているのだろう。
額に手を当てて搾り出すように呟く幼馴染みに向かい、あたしは思いっきり抗議の声を上げた。
どんどん熱をもつ顔はこれ以上ないくらい真っ赤だ。
…お互い、改めて向かい合って告白した事はないけれど。
好きか嫌いかと問われれば、間違いなくあたしはエドが好きで。
エドもあたしの事を好きなのは知っている。
そして。あたし達はもう幼い子供じゃない。
今夜、ばっちゃんは荷物運び要員のアルを連れて出張整備に出掛けて帰ってこない。
エドとアルが長い旅からリゼンブールに帰ってきたのはつい先月の事。
彼らの旅が終わってから初めての二人だけの夜。
全く予想しなかったと言ったら嘘になる。
「じゃあ、なんて言えばいいんだよ。ヤらせろって?」
「馬鹿、スケベ、変態、エロ豆───!!!」
腰を屈め(悔しい事に、今じゃあたしよりずっと背が高いのだコイツは)、
あたしの顔を下から覗き込むようにして。
わざとおどける様に言う男に向かい、今度は拳を振り上げる。
「もう豆じゃねーっての」
が。あっさり捕まれた腕は、逆に壁際に縫い止められて。
「!! …エド…っ!」
射抜くような金の瞳が、すぐそこにある。
お互いの息が掛かるくらい間近に寄せられた顔。
もはや機械鎧ではない、彼の右手に捕まれた手首が熱い。
でもその視線は、ふいに逸らされて。
「……オレだって怖いんだよ。自分を抑えられそうにない。…もう、幼馴染みってだけじゃいられない」
掠れた声で、苦しげに告げられた言葉。
震えているのは。
怯えているのはあたしだけじゃない。
ずっとずっと、幼馴染みという立場に閉じ込められてきた気持ち。
全てが終わるまで気付いてはいけないと、見て見ぬ振りをしていた心。
最初は無意識だった。
単なる幼馴染みに対する好意だと思っていた。
それだけじゃないと、気付いたのはいつだっただろう。
何かが変わってこの関係が壊れる事を恐れたのは、あたしだけじゃない。
「……だから馬鹿だって言ってるのよ。こんなの、いちいち了解なんて取らないでよね」
頭はいいくせに不器用でぶっきらぼうで意地っ張りで。
だけど誰よりも優しいエド。
あたしを宝物のように大切にしてくれているエド。
だからこんな風に真正面からしか来れないエドが、いかにも彼らしくて。
勿論まだちょっと緊張してるけど。
逃げ出したいくらい恥ずかしいし、変わる事が怖くない訳じゃないけど。
───この想いは本当だから。
やっと微笑む事のできたあたしに、エドが一瞬驚いたように目を瞬く。
やがてそれはふわりとした柔らかい笑みになって。
あたしの唇に、ゆっくりと彼のそれが重なった────。
いや……まぁ、たまには甘い二人を……ね?
これくらい、表に置いても大丈夫だよ………ね?(びくびく)
エドウィン小説アンソロジーの数年後バージョンというか、
衝動に任せてってのもアリだけどこういう初めての方がいいなというか……妄想大爆発。
ぶっちゃけ地下室用にエロ漫画描くつもりだったんですが、
1頁目で力尽きました。
勿体無いのでぷちSSを付けてリサイクル。
どーでもいいけど、私が書くとお互いに馬鹿馬鹿言わせる話がやたら多いなぁ…
これぞ馬鹿ップル?(違)
続きは今度こそ地下室にアップします…ごふっ。(吐血)
(05.05.25.UP)