高校生ウィン&エド。分かり難いけどエド、ウィンリィよりちょっと背が高いのよ本当は…!

「あーもう、あんたのせいで完全に遅刻じゃない!!」

「しつこいぞウィンリィ! だいたい、ヒトを起こすのにスパナで殴りつけるか普通!?」

「そうでもしなきゃ起きないのは誰よ、このねぼすけ!!」

「モノには限度があるわッ! 下手すりゃそのまま永眠するトコだったぞオレは!!」



ばたばたばた。

ハイスクールに入学して約1ヶ月。

ようやく馴染んだ通学路を全速力で駆け抜ける。

但し、時間が時間なだけにあたし達と同じ制服を着た生徒の姿は既にない。

…全部、この幼馴染みのせいだ。



現在、エドはひとつ年下の弟と二人暮し(大学教授のお父さんは海外在住)。

地元のジュニアハイスクールに通っているアルは日直だとかで今日はいつもより早く家を出たらしく。

いつまで待っても待ち合わせ場所に来ないエドを心配して彼の家まで迎えに行ってみれば、

夜更かし魔の幼馴染みは枕を抱えて気持ちよく爆睡中だった。

蜂蜜色の髪を見下ろすあたしの顔が引きつったのも無理はない、と思う。



「あー…だりー…。も、どうせ間に合わないし。諦めてサボった方が賢くねぇ?」

「何言ってんの! それでなくてもあんた、先生に目を付けられてるのにこれ以上印象悪くしてどーすんのよ!」

そう。エドは良くも悪くも、とにかく目立つ。

東部きっての進学校で入試の成績はトップ(それも開校以来の好成績だったらしい)。

基本はインドア派の帰宅部のくせに運動神経も抜群で運動部からは勧誘の嵐。

見た目も…悪くは、ない。

入学1ヶ月にして、たぶん学内で一番の有名人。

だが、どうにも協調性に欠けるというか。

敵を作りやすいタイプというか。

売られた喧嘩は倍以上の値段で買う、トラブルメーカーな彼の周りは騒ぎが絶えない。

よって先生方の評判はかなり微妙だ。

…まぁ、それ以上に女の子からの評判は上々のようだけど。

エドとあたしがどーゆー関係か訊きに来た女の子は、一人や二人じゃない。

勿論、訊かれたって「ただの幼馴染みの腐れ縁」としか答えようがないんだけど。



………………。



正直、ちょっと面白くないかも。

ほんの少し前まであたしより背もちっこい豆で、ほっぺたもぷっくりしてて、まるで子供だったのに。

どんどん大人っぽくなって女の子にキャーキャー言われるエドなんて想像もつかなかった。

エドが「あたしの知ってる幼馴染みのエド」じゃなくなるようで…怖い。

そんな事ある筈ないって自分に言い聞かせようとしても、一度浮かんだ考えは消えてくれなくて。

今だって、あたしはこんなに必死で走ってるのにエドは眠そうな顔のまま全然普通について来ていて。

リーチの差だとか、基礎体力の違いを思い知らされるようで。

それがなんだか悔しくて、後ろも振り返らずに更に大股で疾走する。



「あ」

「…何よ!?」

「白」

「…………………………」



ガゴッ。



「…っで────!! いきなり鞄の角で殴んなよ、親切に教えてやっただけじゃねーか!!」

「何が親切よ、このスケベ豆!!」

「もう豆じゃねーだろ!! つか、その鞄の中にスパナも入ってんだろ、マジでオレを殺す気か!?

そもそも学校行くのになんでそんなもん持ち歩いてんだてめーは!!」

「機械工学部の魂にケチつけるとはいい度胸してるじゃない!!」

「何だそりゃ!!!!」



…馬鹿馬鹿しい。

やっぱりエドは、エドだ。

あたし達の関係は変わらない。



───と。

「…………よし、決めた」

道にしゃがみ込んでアタマを抱え込んでいたエドがすっくと立ち上がった。

「って何を…」

さっきまでの全力疾走の名残で未だ息を弾ませているあたしの目に、

幼馴染みの何か企んでいるような顔が映る。



「本日、エドワード・エルリックは度重なる頭痛の為欠席。ウィンリィ・ロックベルもその責任を取って付き添う事」

「…はぁ!?」



あたしとしてはエドの勝手な言い分に呆れるしかない。

だがしかし、反論しようとしたところであっさり片手を捕らえられた。



「───せっかく、いい天気なんだしさ。教室で勉強なんかすんの、勿体無いだろ」



眩しい。そうとしか表現できない笑顔に、一瞬声を失う。

そして当たり前のようにあたしの手を引っ張り、学校とは逆方向へと進むエド。

あたし達は幼馴染みで。

幼馴染みなら手を繋ぐのなんか珍しい事でも何でもなくて。

実際、小さい頃はよく一緒に手を繋いで歩いて。



だけど今。

あたしの手より大きくて骨ばった手にこんなにもドキドキするのは──────



「………今日だけ、だからね」



────もしかしたらあたしは、心の底で変化を求めていたのかもしれない。












…という事で。
高校生エドウィンのお祭り「学園パラダイス☆」様に滑り込みで参加したブツに
無駄に長いぷちSSを付けてここにもアップです。
いつの間にかSSがメインになってるウチのエドウィン絵でレイヤーまともに使ったのも初めてかも…。
時間なくて背景が手抜きになってしまったのが心残りですが、
校章が何気にフラメルなのは気に入ってます。
そしてパラレルだろーとナンだろーと、全く甘くないのが私らしい。
せっかくなんでエド>ウィンな身長差を強調して(この絵は逆のように見える…遠近法のバカやろー!)
攻めエドっぽくしようと思ってたのにあっさり挫折したっつーのコンチクショウ。

…うん。今まで散々原作主義だとかラブラブは違うとか言ってきた身なので
コレの続きというか、パラレル世界をメインでやってく予定は今のところありません。
未来図と同じく、あくまでこれは別物。
「錬金術も戦争もない平和な世界で、彼らが普通の生活を送れていたら」という
半ば願望に近いものを一度やってみたかったんです。
エドの右手が生身なのもその表れ。
パラレルはパラレルで面白いし好きだけど、
やっぱり「鋼の錬金術師」の魅力はあの世界観とストーリーだと思うんだよ。
罪を背負うエドと、機械鎧と、それを支えるウィンリィあってのエドウィン。
今一歩恋愛に疎いヘタレなエドとエドより強いウィンリィはお約束。
あの関係の二人が好きなんだなーと実感しました。

…とか言いつつ原作のツライ展開から逃避すべく、
またパラレルやっちゃう可能性も大。その時は宜しくです(殴)。


パラレルついでに、面白くもないおまけがあったり。
学ラン&セーラー服バージョンの下描き&お祭りの絵BBSに投稿したブツはコレ。

(04.06.06.UP)