ウィンリィの頬を涙がひとしずく流れた。






「……何泣いてるんだよ……」

「な、泣いてなんてないわよ」



泣いてたまるものかと口をへの字に曲げて耐える。

これ以上醜態を見せてたまるものか。



「ふーん……」

エドワードはそう言ってじっとウィンリィを見つめる。


頬にはひとしずくの涙。

それは流れ落ちようとはせず、その場にとどまっている。



「ほんとに泣いてねえんだな?」

「……」




頬の一粒の涙を指摘されるに決まっている。

そして、泣いてるじゃねーかと馬鹿にされるんだ。

そう思った。



だけど――





エドワードが無言でウィンリィの顔に近づいてくる。





そして――









そのひとしずくの涙を拭うように、涙に、頬に、口付けされた。







そして、彼が元の位置に戻ってきたときには、ひとしずくの涙も頬になかった。


エドワードは再びウィンリィの顔を見つめて満足そうにひとつ頷いた。


「おまえが次に泣くのは嬉し泣きなんだからな。泣くときは言えよ!」



そうだった。

次に泣かすときは嬉し泣きだとエドワードが宣言した日。

ウィンリィもそれまでは絶対に泣くものかと誓ったのだった。


だからまだ泣けない。




「うん、泣きたい時はいうから――」





だから、キスはその後にして。




そう心の中で告げたのだった。















『EDWIN 503 FESTIVAL 2010』 23:涙が一粒(2010.5.25)

文:アオ(たちばないちり)  イラスト:つきむら章





私は文章を先に貰ってそのイメージで描いただけなので語れるような事はありません(笑)。
シリアスな思春期もいいよなぁ。
いちりさん、合作してくれて有難うございましたv

(10.08.01.サイトUP)