「─────」
唐突に、何の脈略もなく零れた言葉。
「なに?」
案の定、ウィンリィは聞き逃したようでオレを振り返りながら小首を傾げた。
「………なんでもねぇ」
そんな面と向かって何度も言えるかよ。
今だって本当に無意識だったんだ。
「ふーん?」
ナンだその目は。
こっちに圧し掛かってくるな。
重……くはないけど、あんまり油断してると襲うぞコラ。
眉を顰めるオレを余所に、ウィンリィは耳元に顔を寄せてきて。
「あたしも…─────ね、エド」
同じ言葉が、返される。
「……………」
「エドがここにいてくれて、嬉しい」
オレに向けられたのは柔らかい……リゼンブールの春の日差しのような笑顔。
────このヤロ、しっかり聞こえてたんじゃねーか。
こうなるとカッコつけて取り繕っても意味はない。
オレは弁解するのを諦めると、細い肩へと右手を伸ばした。
バランスを崩して慌てるウィンリィを膝の上に抱きかかえるようにして、
言葉の代わりにその耳朶に飾られた銀のピアスに唇を落とす。
ありがとう。
オレの幼馴染として生まれてきてくれてありがとう。
オレに立ち上がる為の手足をくれてありがとう。
オレの代わりに泣いてくれてありがとう。
────ずっとオレを支えてくれてありがとう。
おまえがいなければ、きっとオレはオレでいられなかった。
オレが今こうしていられるのは、全ておまえのおかげだ。
そして─────オレを好きになってくれて、ありがとう。
溢れる気持ちは止まらない。
だからこれからも一生分の「ありがとう」を、おまえに返し続けよう────。
今年の503は去年と趣向を変えて未来バージョン激甘で。
思春期は多いけど表で未来兄視点は何気に初でした。
……やっぱり現在とは別人のようなえろさ攻めっぷりだな未来兄!!
(07.05.03.UP)