「………?」
駅で暇潰し用に買っておいた新聞を読み始めて30分くらい過ぎた頃だろうか。
さっきまで窓枠に寄り掛かって大イビキを掻いていた兄さんが
じっと窓の外を見ているのに気が付いた。
ボクらが旅に出て既に3年。
その殆どは汽車を利用したものだから流れる景色なんて
今更珍しくもないだろうに…と怪訝に思いかけて、すぐに理解する。
青い空。白い雲。緑の大地。
ところどころ小さな家があって、ぽつりぽつりと見える白い塊は羊だ。
……ああそうだ。
この辺りはリゼンブールに似ているんだ。
パーツひとつひとつは微妙に違うけど、雰囲気そのものが似ている。
勿論、ボクらが今「調べ物」で向かっているのはリゼンブールじゃない。
全然、方角も違う。
だけど同じ国内なら同じような景色があっても不思議はなくて。
……あの丘の向こうに煙管を咥えた小さな人影と機械鎧の脚を持つ黒犬と
明るい金色のポニーテールが見えてもおかしくないような、錯覚。
「……………」
そっと、新聞の位置をずらしてボクもその景色に見入る。
兄さんにバレないように。
鋼の鎧が大きな音を立ててしまわないように、細心の注意を払う。
もしかしたら兄さんは無意識なのかもしれないけど。
指摘したら顔を真っ赤にして否定するに違いないけど。
その逆にボクが気付いてる事も全て分かってて黙ってるのかもしれないけど。
ボクは何も言わない。
兄さんも何も言わない。
暗黙の、了解。
でも。結果がどうあれこの「調べ物」が終わったら──
一度メンテナンスに戻ろうと強引に説得してみるのも悪くない、かもしれない。
いぇー。タカミンで頑張ったよ私! 4時間掛かったよ!
その半分は背景だよ!!(だから普通に絵板か写真屋使えよ…)
まだ続いてた景色シリーズ4枚目。鎧も汽車もオール適当です。記憶と想像のみです。
細かいとこは突っ込まない。OK?
絵板だけど1枚オンリー。やたら重いのもあるけど、なんとなくSS付けて単品扱いしたかったので。
たまにはこんなのもあり。
(06.05.26.UP)