…なんでウチの二人はこう、普通のラブラブから遠いのか…




昨日まで掛かりっきりだった仕事も終わり、本当に久しぶりの完全な休日。

随分前に買ったままずっと読む機会のなかった機械鎧雑誌を手にくつろいでいると、カチャリと扉の開く音がした。



「…あんたねぇ、部屋に入る時はノックくらいしろっていつも言ってるでしょ」

「…………おう」



少しの間の後、返ってきたのは何とも気の抜けた声。

…まったく、聞いてるんだかいないんだか。

そりゃ、お互いの家に入り浸ってる今となっては遠慮するような間柄でもないんだけど……と

少し眉を顰めるあたしを余所に、エドはこちらに歩み寄るとすとんと腰を下ろした。

ちょうど、あたしと背中合わせになる形だ。



「……………………」

「……………………」

「……………あー…、ウィンリィ」

「何? ゴハンならまだよ」

「違うッ!」

「あそ」

「……………………」

「……………………」

「……………………」



それきり、沈黙。

でもまぁ、エドが静かな時は大抵研究の事を考えてるって知ってるあたしはこれくらいじゃ動じない。

何も喋らなくても。

触れなくても。

エドが傍にいるという事だけで結構、幸せだったりする。

うん。───旅に出て滅多に帰ってこなかったあの頃とは大違いだ。

だからあたしはエドの気配を背後に心地よく感じつつ、再び手元に意識を戻した。



だけど。




「……………結婚、しねぇ?」




まるで「今日の夕飯はシチューにしよう」とでも言うように何気なく紡がれた言葉に、

思わず雑誌を取り落としそうになった。



「……………………」

「……………………」

「……………………」

「……………………………………オイ。なんか言えよ」

「やだ」

「ってオイ!!!」



焦ったようなエドの声に、くるりと振り返る。

そのまま雑誌を床に置くと、キッ、と幼馴染兼恋人を睨みつけてやった。



「ちゃんと!! あたしの目を見て!! 言ってみなさいよ!!」

「……ッ、後悔すんなよ!?」

「するならとっくにしてるわよ馬鹿!!」

「誰が馬鹿だ!! いいかッ、オレと結婚しろウィンリィ!!!」

「仕方ないから結婚してあげるわよ!!」

「上等だ!!!」



お互い真っ赤になって怒鳴りながら、肩で息をする。

そして……呼吸を整えて改めて向かい合って。

エドの右手…2年前にやっと取り戻した生身の右手が、微かに震えるあたしの左手を捕らえた。

いつの間にサイズを調べたのか。

白いケースから取り出したプラチナのシンプルなリングがぴったりとその薬指に納まる。



「……………遅くなって、悪かった」

「あたしを誰だと思ってんの。誰かさんを待つのは慣れてるわよ」

「う……それはそう、かもしんねーけど。やっぱ、改めてっつーか……」

「それこそ、今更でしょ。その分、沢山幸せにしてくれるわよね?」

「…ったりめーだ。オレを誰だと思ってんだ」



背も伸びてがっちりとした体格の大人の男性となっても。

少年の頃から変わらない不敵な笑顔と、強い意志を秘めた金の瞳に吸い込まれる。




「────愛してる」




重なる唇は、その証。

だから。




これからも、ずっとずっと一緒に──────────。










20歳エド祭用に描いた絵+ちょこっと台詞に、本文完全版を追加〜。
ごめん、可愛げも感動も無くて……この二人は既に予約済みだから今更なのよ……(苦笑)。
ぷちSSはこれ単品で完結してますが、一応当サイトの未来編の流れとしては

エドウィン14→(地下室エドウィン3→4→5)→幸せのかたち→エドウィン4→ラクガキ31の洗濯兄さん
→ラクガキ32の寝坊兄さん→ラクガキ33の弟にツッコミ入れられ兄さん(笑)→コレ

…となってます。今のところ。(今のところって…)
まぁ、いちいち順番に見ずともここに至るまでの二人の関係はなんとなく分かるかと。
どれもこれもその場の勢いで書いてるので、厳密に時間軸や設定を決めてる訳じゃないしねー(笑)。
実際、兄さんのプロポーズも当初の予定より早まったしなぁ。
せいぜいこういうシチュのパターンもありかな、という程度です。
だからまた別のプロポーズバージョンを書く事もあるかも…。
機械鎧ありバージョンも捨て難い。

勿論、思春期一方通行もまだまだやりますよ!
ここ暫くエドウィン思春期ネタ止まってたっぽいけど、
ちゃんと4コマとか日記小話とかフリー絵とかゲームシナリオでやってますよー!

(06.01.17.UP)